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北山猛邦 『月灯館殺人事件』

月灯館殺人事件 新本格ミステリ・カーニバル (星海社 e-FICTIONS)
雪の降り積もる中、山中の荘厳な館で起こる連続殺人。館の見取り図、脅迫状、数々の物理トリック、雪密室、帯や裏表紙でも煽られる「ラストの一文」。なんとも古式ゆかしい新本格ミステリガジェットの山。
館の主はミステリ作家で、空き部屋に数多の作家を住まわせ執筆環境として提供している。そのため、登場人物の大半が推理作家という点がユニーク。
作家たちの間で交わされる話題は、ミステリ好事家の語り合いというよりは作り手のスタンスや苦悩の類が多い。犯人の動機や過去の事件も含めた真相からもアイロニカルな部分を感じるが、なかなか深刻さ・重苦しさが伝わってこない感触。ライト目な文体によるものだけでなく、相変わらず図解に力を入れた大掛かりな物理トリックと、「ラストの一文」のギミックの作用によるものだろう。
結果として、これは良いまとまり方なのか歪な作品なのか分からないが、個人的には好感とする。