書は言を尽くさず、

本読んだりしています

小林泰三 『未来からの脱出』

未来からの脱出 (角川書店単行本)
サブロウは老人たちが集められた施設に暮らしているが、何故自分がここにいるかが分からない。過去の記憶はなく、自分が何歳なのかも不明。単なる認知症なのか、それとも何らかの理由があってここにいるのか…。不審に思っていた際に見つけた「ここは監獄」という何者かのメッセージ。サブロウは脱出を試みる。
拠り所も不確かな状況で進むミステリ仕立てのストーリー。小林泰三と記憶という題材は結構頻出で得意分野と言える。100歳程度の男女4人が車椅子でわちゃわちゃしながら脱出計画に取り組むのは想像するとシュールな風景。物語途中で謎の真相が明かされてからは激動の展開。期待値をどの程度に置くか次第かもしれないが、近年の小林泰三作品ではかなり抜きん出た面白味を感じた作品だった。