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貴志祐介 『罪人の選択』

罪人の選択 (文春e-book)
4編収録の短編集。
貴志祐介の原点に近しいSF3編と、ミステリ1編。どれも作り込まれた作品設定に舌を巻く。
夜の記憶…幻想的に見せて実は徹底的に考え込まれた設定。デビュー作以前に描かれたものらしいが、著者がデビュー前から既に成熟していたことが窺える。
呪文…遥か地球と異なる惑星が舞台。宇宙規模のSFと、惑星の文化として見られる民間信仰の一見ミスマッチな組み合わせが、実はロジカルに組み合わさる。
罪人の選択…生死を分かつ選択を強いられた罪人は、推理する。二つの時間軸が代わる代わる描かれる。著者のミステリにかける拘りと工夫が感じられる作品。
赤い雨…生物を蝕む赤い雨が始終降り注ぐ地球。赤い雨から守られた「ドーム」。外に暮らす大多数の人間たちのうち、狭き門を突破できた優秀な人材のみが「ドーム」に移住することができる。未来の格差社会を描いた作品として面白い。