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小林泰三 『杜子春の失敗 名作万華鏡 芥川龍之介篇』

杜子春の失敗 名作万華鏡 芥川龍之介篇 (光文社文庫)
芥川龍之介の作品をモチーフとした4篇の短編集。
各編には「杜子春の失敗」「蜘蛛の糸の崩壊」「河童の撹乱」「白の恐怖」という芥川龍之介の小説のタイトルを含んだ題名が付けられ、冒頭で芥川作品のあらすじ紹介がある。本編では芥川作品と何の関係もない現代的な世界線と、芥川作品の設定を模した世界線が交わるように展開される。
芥川作品の世界線は著者なりのアレンジも含んでいて、著者による芥川作品解釈のような性質も帯びている。また、本作では力の入ったグロテスク描写、他作品とのクロスオーバー、クトゥルフ神話要素なども垣間見られ、近年あっさり目の作風が多かった(個人的印象)著者にしては、多種多彩で気合が入った短編集のように感じた。