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吉田修一 『長崎 コレクションIV』

長崎 コレクションIV (Shuichi Yoshidaコレクション)
愛蔵版。吉田修一の「長崎」に関する作品集。
『キャンセルされた街の案内』『最後の息子』『パーク・ライフ』から抜粋の数編と、『長崎乱楽坂』『7月24日通り』『横道世之介』丸々、単行本未収録の雑誌掲載作「台北迷路」、書き下ろしの「自伝小説IV」を収録。
単行本未収録の作品についての感想。「台北迷路」は、台湾旅行に来たカップルの掌編。この設定を膨らませたものが、ちょうどこの間NHKドラマ化された『路』になるのだろう(なおドラマ『路』は丁寧な映像を映していたものの、吉田修一の原作の良い所をもっと出せたはずの惜しい仕上がりだった…)。
「自伝小説IV」は大学の頃。東京での複数人での共同生活や、大学の頃の初々しい思い出は、『パレード』『横道世之介』などの作品のモデルになっているのかもしれない。そう思って今回『横道世之介』をパラパラと流し読んでみると、やはり素晴らしい作品だと思った。読み終えることに対する勿体無さ、描写についての尊さのようなものを覚えさせる。
これがコレクション最終巻なので全体的に振り返る。自伝小説で語られる若かりし頃のエピソードは、初期の著作に直接的な影響を与えている気がするが、近年の作品に対してはそうではない印象。近年はもっと大人びた、落ち着いた、俯瞰的というか…吉田修一も年齢を経るごとに変化し、それを作品にフィードバックしているのだろうなと感じた。つまり、自伝小説の続編が読みたいってこと!