学校でいじめに遭うアールとグレイの兄弟は、突如絵本の物語の中の世界に入り込んでしまう。そこでは外から来た者の分身が、異形の怪物として暴れ回っている。各々の分身を退治することで、アールとグレイは元の世界に戻れるという。
著者の作品の中ではファンタジー色の強い方だが、一方で現実世界での学校での扱いやその環境が生んだ繊細な心理描写はまさに乙一流。
1巻ではアールの分身・蛇と、グレイの分身・獣の退治が目的となる。物語の世界の人物は死んでも翌日蘇る、という大きな特殊設定が興味深く、またこの設定を戦術的・ギミック的に用いているのも巧妙である。物語は完結せず、直線的な「つづく」といった結び方になる。