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小林泰三 『神獣の都 京都四神異端録』

神獣の都 :京都四神異端録 (新潮文庫nex)
文庫書き下ろし。
京都には青竜朱雀麒麟玄武白虎の5獣とその眷族として木火土水金の5つの組織があり、互いに牽制し合うことで京都の、ひいては日本・全世界の均衡を保ってきた。東京に住む大学生である陽翔は、傷心旅行で京都を訪れた矢先に、2つの眷族間の争いに巻き込まれるが、これは始まりに過ぎなかった。

前述の要素から明らかな通り、世界設定のベースは五行思想。そこに小林泰三の客観的・科学的観点からのメスというか突っ込みを入れつつ、5つの勢力の戦いを描く。
近年小林泰三作品に多いバトルものである。5つの神獣と眷族は超人的な特殊技能を持ち能力バトルを行うが、ここで重要なのは陽翔の存在。火の眷族の生き残りという設定だが、本人はそれを知らず育ったために感覚は一般人であり、外部からの目線で冷静に突っ込みをする姿が目立つ。読者目線的な位置付けでもあり、一方でメタになり過ぎない程度のバランスも保っている。
この設定からすると、複数巻展開するような壮大なスケールのエピソードにしても良いように感じるが、1巻で京都の件は綺麗に閉じてしまう。諸事情ありそうだが残念。