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貴志祐介 『エンタテインメントの作り方』

エンタテインメントの作り方
貴志祐介「語りおろし」の小説指南。
イデア、プロット、キャラクター、文章作法、推敲、技巧という6つの章立てで、ホラー・SF・ミステリなどエンタテインメントを作るにあたってのノウハウが語られる。
目から鱗な内容といえば、著者のリアリティへの拘りを挙げる。想像力の限界に挑み様々な「もし…」を考えることで、設定の詳細化を行い、作品世界にリアリティを付与する。なるほど確かに、読んでいて無理筋を感じたり、説得力や必然性に欠ける展開のある作品は、こうした努力が欠けているのかもなと考えた。
なお、指南する事項につき都度、自他を問わず実在の小説を具体例として取り上げるのでイメージが付きやすい。アイデアについては日本ホラー小説大賞受賞作の『黒い家』の発端、キャラクターについては『悪の教典』における蓮実聖司の造型の工夫、プロット・アイデア両面では『新世界より』の舞台が1000年後の日本だった理由など、自著の製作過程や裏話を知ることもできるので、小説家志望でなくても著者のファンであれば見所は多い。