書は言を尽くさず、

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早坂吝 『誰も僕を裁けない』

誰も僕を裁けない (講談社ノベルス)
上木らいちシリーズ第3弾。
女子高生かつ売春婦を探偵役とする著者のデビュー作から連なるこのシリーズ。前作はノンシリーズ『RPGスクール』でイマイチな方向に脱線したが、本シリーズで巧いことエロミス方面に戻ってくれた。本格ミステリとエロ、というか性描写の融合は新機軸。性を小説の彩りとしてではなくミステリを構成する要素として、煽情的にはならず技巧的に仕上げる様は見事の一言。どうも性描写というものは、著者の理想や妄執が注がれがちになるか、または気取りが入って省かれたりするものだが、著者はその辺りあっけらかんとしていて極めて冷静である。賞レースでもちょっと目を掛けたくなるというか、一定の票を集めるのは納得がいく。オンリーワン。