書は言を尽くさず、

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雀野日名子 『山本くんの怪難 北陸魔境勤労記』

山本くんの怪難 北陸魔境勤労記 (MF文庫ダ・ヴィンチ)
著者の本領発揮、田舎社会を舞台としたホラー(怪談)。他の作品では県名をイニシャルにしたり、架空の市町村を用いたりしていたが、本書は県名を出しての福井県いじり。田舎の閉鎖的なムラ社会北陸新幹線の開業で沸き立つ石川県との対比、無軌道な町おこし、共働き率の高さの背景等々。とにかく福井についてロクでもない扱いをするが、これらはいずれも愛憎半ばの複雑な感情が為せる技であり、よくある自己愛による自虐と言える(そうでなければ県名は出せないし)。具体的な観光地の名前を出せるようになったため、イメージが付きやすくなる点がメリット。
文章面の特色はですます調の口語体。読み易くなりそうなものだが、一文の情報量が多いため読み下し難い。ここは惜しいところ。