書は言を尽くさず、

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浦賀和宏 『緋い猫』

緋い猫 (祥伝社文庫)
戦後のGHQ支配下の日本が舞台。主人公・洋子は共産主義者と恋に落ちるも、彼は失踪。その足跡を辿り青森の小さな村へ向かう。
戦後という時代設定やGHQ・プロレタリア・下山事件などの史実に沿った題材は、著者が今まで扱ってこなかった要素。作家としての幅が広がる片鱗は見せるものの、一つ一つを深く掘り下げることはしないため、軽い味付け程度にしかなっていない。また、平易な文章のタイプの浦賀作品でリーダビリティは優れているが、反面その時代感・戦後の空気を文章から読み取ることは難しい。
そして、帯で煽る割に、結末の何じゃこりゃ感。読み進めるのに多少の苦行を要するものの、これでは報われないのでは。もう少し腰の入ったしっかりとしたミステリを期待していた。