文藝賞受賞作。
監視と被監視。実の兄弟の異常な関係。躊躇いもなく当時の最新の表現を使うのは、流行り廃りを恐れない勇気のある事だと思う。
過去に読んだことがあるはずだが、細かなエピソードは覚えていても大枠の流れは覚えていなかった。自分の傾向からすると逆のことが多いので、何故だろうかと思う。
以下ネタバレ。
意外だったのは、手記形式でミステリ的な手法を用いている点。これはすっかり忘れていたので新鮮な読み手として楽しめたが、入れ子構造にすることによる物語のスケールダウンという欠点はある。ただ、「客観視しているつもりができていない」ということを表現するために、これほど適した方法もない、のかもしれない。