書は言を尽くさず、

本読んだりしています

矢部嵩 『少女庭国』

〔少女庭国〕 (ハヤカワSFシリーズJコレクション)
女子中学生が閉鎖空間で最後の一人になるまで生き残り合戦というデスゲーム設定。
凡そJCとは思えない利いた風な口だとか、あまりに俯瞰的な状況分析描写だとか、急に砕ける地の文だとか、文章面で癖と言える要素は多くあるが、苦な読み辛さではない。油断して読めない、という印象。なお絵で騙されたジャケ買い層は可哀相ではある。







こっからネタバレに近いので、新鮮な気持ちで読みたい人は控えてください。









本編は50頁強であっさりめに閉幕。その後の「補遺」150頁において、膨大なif展開が登場人物のみを変え、繰り返し描かれ続ける。途中は小説家としての「勿体無い精神」の現れなのかとも思ったが、途中から巧みな世界設定の一環であることに気付く。終盤に至り、本編の「ようこそ反省会へ」の文言が重みを持つ。
主眼は「補遺」における俯瞰的思考に基づいた行動分析や文明発展論を通した、真理原理の表現にあるように思う。その辺りは『魔女の子供はやってこない』に通ずるものがある。ただ、小説形式を崩し過ぎていて人を選ぶ。個人的には小説形式を崩した結果、読みやすくなったようにも感じる。