書は言を尽くさず、

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白河三兎 『神様は勝たせない』

神様は勝たせない (ハヤカワ文庫JA)
文庫書き下ろし。
中学のサッカー部を舞台とした青春群像劇とでもいうもの。
どこかに残した「ヒネクレ」や「頑固さ」や「悲観癖」等で「大人になりきれなかった大人」を描くことが著者は得意であり、今まで発表してきた作品にはいずれもそうした登場人物(多くは主人公)の姿があった。
しかし、本書は視点人物が全て中学生ということもあってか、そうした捻くれも見られず真っ当な若さを見せて青春をしている。繊細な心理描写はお手の物であるため、読ませる力は高いものの、著者らしさはやや薄れて「よくある」青春小説に留まっている感がある。チームが抱える問題とその真相も、やや手垢にまみれた内容なのが気になった。もっと「できる」作家である。