書は言を尽くさず、

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阿部和重 『□』

□ しかく
「しかく」と読む。『リトルモア』および『文學界』掲載作品をまとめた連作短編集。
帯で「作家初のホラーサスペンス」と謳われているが、登場人物の人格の異様さはいつも通り。普段の阿部作品と異なる箇所といえば、世界設定がいつも以上に常軌を逸している点だろう。しかし、その点が非常に本書を読みづらいものとしている。
要は、イっちまってる世界でイっちまった人物が語り手となっているので、腰を落ち着けるための土台もない作品となってしまっている訳だ。いつもは、世界設定は現実に則していることが多いので、視点人物を異様なものと決め付けて読み進められるが、本書ではそれが出来ない。
その流れで迎えた結末も、何が凄くて何が酷いのか、盛大にズレまくっていて、結果読み手に残るものは少ない。失敗しているように見える作品だが、何をしたかったのかが解らないので失敗か成功かも判別できない。
問題作かもしれないが、阿部ちゃんらしい、と締め括るのが相応しいか。