書は言を尽くさず、

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古川日出男 『MUSIC』

MUSIC (新潮文庫)
『LOVE』の続編にあたる長編小説。
古川日出男の小説としては、このタイトルはかなり直球と言える。というのも、古川日出男の文章はリズムというかグルーヴに溢れており、音楽的であるから。
その名に恥じない、堂々とした文章のリズム感を見せつける作品。序盤は複数いる視点人物(と猫)の描写、というか世界設定の書き込みに枚数を割いているためか、若干読み進めるのにしんどさを感じる部分が多い。中盤あたりからキャラクター同士の交錯が始まると、一気に急展開となる。それでも読み辛い部分が残ることがあるが、そこが音楽性と似た部分で、合わないものは合わない、感覚的な要素が強く関わってくる。
個人的には、『LOVE』『ゴッドスター』『MUSIC』の古川三部作周辺の作品は、合わないことが多い。文章のライブ感・グルーヴを優先し過ぎている気がするのである。ストーリーラインを喰うほどの文章は辛い。『アラビアの夜の種族』『ベルカ、吠えないのか?』あたりは、ストーリーラインの強力さのためか、文章とのバランスは取れていたように感じられる。