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秋月涼介 『消えた探偵』

消えた探偵 (講談社ノベルス)
精神疾患者ばかりが集められた診療所で起こった、幻のような殺人事件。死体は消えて、他の目撃者はいない。患者の一人であるスティーヴンは、その解明のため調査を始める。
と、物凄く面白くなりそうな筋なのだが、前半は患者全員の病状紹介兼聞き込みが繰り返されてワンパターン気味で、後半に期待したところ割とあっさりと結末させた印象。エイヤー気味な処理も多く、「惜しい」という感想がどうしても残る。


著者の作品は、メフィスト賞系ではあるが、意外に真面目でブッ飛んだり突き抜けたりしない。かといって本格ミステリ方面に傾いているかというと、そうでもない。一言で表せば、地味である。
だからこそ、デビュー作で言えばルビだったり、本作で言えば「綽名」だったりと、妙な特徴が目立つ。これらの特徴を好きになれるかどうかで、愉しみの度合いは大きく変わってきそう。