書は言を尽くさず、

本読んだりしています

古川日出男 『LOVE』

三島由紀夫賞受賞作。
古川日出男の真骨頂、群像劇。そして舞台は「東京」。これも真骨頂である。
古川日出男の描く「東京」は、「フルカワトウキョウ」とでも言うべきような個性に溢れた空間となっている。現実の「東京」とは異なる印象を残すが、グルーヴを利かせた文体と話運びにより、「当然にリアルだ」と納得させられているような気になる。
読者を置いてきぼりにする記述もなくはないのだが、癖になる作家である。

本作固有の点としては、群像劇化が激し過ぎて、誰に感情移入するか判断に悩む。しかし、章ごとに読めば、主軸となる人物は明確になっている。幾度も読み耽ることによって、味わいの増す作品だろう。