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浦賀和宏 『萩原重化学工業連続殺人事件』

帰ってきた安藤シリーズ。シーズン2。
「現実」「バーチャル」「世界」「脳」「自我」「引きこもり」といった、浦賀和宏特有のいくつかのキーワードが散りばめられた1500枚の長編。
それらキーワードの中でも特筆すべきは、安藤シリーズ共通のテーマである「脳」の位置付け・可能性に対して一つの新解釈を提示し、その解釈に基づき構築されたSF設定風ミステリである点。この傾向は明らかに安藤シリーズに見られたものであり、全体の雰囲気としても、しつこくない心理描写と気取りや少しの自己陶酔をも含んだ「懐かしい浦賀和宏」に近い。
松浦純菜シリーズがどうしても合わなかった自分としては嬉しい一作。おかえり。