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西尾維新 『きみとぼくが壊した世界』

推理小説からはぐれてしまった』、『あの作家は五作目以降はぐれてしまった』。しょうがない、はぐれてしまったのだから。ジャンルにも作家にも、勿論読者本人にも責任はない。

世界シリーズ第3作。
病院坂黒猫がロンドンへ、という西尾維新としては突拍子もない土地柄モノ。
今まで日本の風景を描かず、描いたとしてもキャラクタの背景の域を出なかった西尾維新。例え舞台をロンドンに移したとしても同じで、風景はまったくのおまけに過ぎず、キャラクタの掘り下げの手段の一つとして利用しているのみである。ただ、この評価は著者・作品を貶めているわけではなく、西尾維新の作家性がより強固に印象付けられる作品であり、下手の横好きしない著者の素直さに好感を抱く。
前述の要素に限らず、物語を牽引する謎と小出し小出しの章立て等、西尾維新としては知る限りでは異色の構成であり、独特の言葉遊びだけに頼らずに読者を飽きさせない試みを仕掛けている。
前2作と比較しての小粒さは否めないが、気持ち良くすんなり読めたのは確か。