書は言を尽くさず、

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いしいしんじ 『ぶらんこ乗り』

冒頭より悲劇の予感を覚えさせつつも、優しく丁寧な文体にて語られる物語。その平穏さの最中へ投入される世界の反転の見せ方は、尋常でないほど巧妙である。
「わたし」の「弟」によって語られる動物に関する物語は、暖かくて優しく、癒しと微笑みを与えるものである。しかし、ただの癒しだけがある小説ではない。本当に心を揺さぶる「物語」とはこういうものだと考えされられる一作。