書は言を尽くさず、

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法月綸太郎 『しらみつぶしの時計』

10編収録のノンシリーズ短編集。
2008年をもってデビュー20周年を迎える著者の、1998年から2008年のキャリア後半の作品を一挙収録。
密室、交換殺人、倒叙ショートショート、ダイイングメッセージなど本格ミステリのエッセンスが散りばめられた収録作の中で、一層際立つ印象を残すのが、表題作と「トゥ・オブ・アス」。
表題作は、特殊状況下に置かれたサスペンスタッチだが、パズラーとしか言いようのないパズラー。論理と飛躍を際どいバランスで組み立てた異色作。
「トゥ・オブ・アス」は、『二の悲劇』の原型となった京大ミステリ研時代の習作。やや性急な展開に感じられるのは、『二の悲劇』と知らず知らずのうちに比較しているためであろう。短編推理としては最小限の配置で工夫しているように思える。