書は言を尽くさず、

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西尾維新 『ニンギョウがニンギョウ』

講談社メフィスト」に掲載していたシリーズに書き下ろしを加え1冊にまとめた連作集。
西尾維新の他の著作、ここでは戯言シリーズを例に取ると、非常識的な設定や超現実的な登場人物こそ頻出するものの、作品世界における理は現実世界をベースにしたものであり、シリーズ初期作品に関して言えば魅力的な謎の提示と強引ながらも論理的な解決がなされていた。
それに対し本作は、少なくとも現実世界と異なる理論・概念・倫理・通念を持つ、ということ以上の情報を読者に与えない、極めて不明確な小説と言える。幻想小説のカテゴリに近く、著者としては異色の挑戦作である。
上記のような相違点により、いつもの西尾維新を期待していた読者にとっては受け容れ難い作品であるように思える。かくいう自分も、違和感以上のものを受け取ることができないまま読了してしまった。