書は言を尽くさず、

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小林泰三 『海を見る人』

海を見る人 (ハヤカワ文庫 JA)

時がたてば、人は変わる。
変わらないものを求めてもそれは空しいことばかり。
変わらないものには永久に手が届かない。

頁数・濃度ともにボリュームたっぷりのSF短編集。
七編いずれも、小林泰三お得意の強烈な論理によって作品世界は形作られている。「ハードSF」と定義される小説を読むのは、ほぼ初めてに近い。しかし思った以上にスムーズに作品に没入する事ができたのは、物語部分の牽引力の強さゆえか。流石の職人芸。
ただし、小林泰三作品としては珍しくユーモアがほとんど見られないのは残念といえば残念。
私的な好みは、物語性とSF設定の融合度が高い表題作と、‘世界の反転’が鮮やかな「独裁者の掟」。