書は言を尽くさず、

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古川日出男 『アラビアの夜の種族』

アラビアの夜の種族〈1〉 (角川文庫)アラビアの夜の種族〈2〉 (角川文庫)アラビアの夜の種族〈3〉 (角川文庫)
第55回日本推理作家協会賞、第23回日本SF大賞をW受賞。
読む者を破滅に導く『災厄の書』についての物語。
まず作者不詳の書物『The Arabian Nightbreeds』を「底本」として、和訳されたものが本書。(という設定)
『The Arabian Nightbreeds』内では、現実世界での物語と並行して、『災厄の書』の物語が作中作形式にて語られる。
こうした入れ子構造で語られるのは、古川日出男にとっての物語への取り組み。『災厄の書』終盤で見られるとあるモチーフは、まさに物語のための物語であることを主張する。豊饒かつ耽美な文章、壮大なスケール。ユーモアも決して忘れず。素晴らしい。
ミステリだとかSFだとか、既存の枠組みで括ることすら非礼にあたりそうな、ひとつの物語。それが本書。