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西尾維新 『ネコソギラジカル』

ネコソギラジカル (上) 十三階段 (講談社ノベルス) ネコソギラジカル (中) 赤き征裁VS.橙なる種 (講談社ノベルス) ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)
無駄に大風呂敷を広げた揚げ句、畳む術を失ってだらだらとシリーズ続編を積み重ねたり、シリーズの存在そのものを黒歴史に封印したりする作家が非常に多い中、人気シリーズを真っ向から完結させようとした西尾維新の潔さに敬意を表する。
戯言シリーズの締め括りとなる一作。というわけで完結編を一気買いし、通しで読んでみた。
上中下それぞれ一冊として、三冊まとめて一作品として、シリーズの完結編としての三つの見方があり、それぞれ評価がバラバラなので順番に語っていこうと思う。
まずは上中下一冊ごとの評価。上は緊張感がありなかなか楽しめる。しかし引きが弱い。凄さを見せようとしているが伝わってこない虚しさ。思いっきり次の巻に放り投げている感がある。続いて中は、序盤がピークで一気に緊張感が薄れていく。で、いつの間にか話が別の方面に向いていく。下はゆったりしているが、何だかんだで盛り上がる部分はある。個別に見ると、どれもバランスが悪い。
次に三冊まとめての評価。正直、中巻あたりからグダグダな部分が続く。まぁその停滞が西尾維新ならではの型破りであり、多分魅力的な部分でもあるのだろう。読んでいてつまらないということは、あまりない。ただやはり、ミステリ的な要素も欲しい。
シリーズ完結編としては、かなりの価値はあったと思う。色んな落とし前をつけることに必死で、一個の作品として洗練させることができなかったんだろう。それでも放り投げたままの設定は沢山あるけれど、「戯言遣い」の成長譚として見事に完結したのではなかろうか、この物語は。