書は言を尽くさず、

本読んだりしています

佐藤友哉 『子供たち怒る怒る怒る』

子供たち怒る怒る怒る

その『真実』におどろいてしまった僕は、それがあまりに意外で凶暴で残忍で綺麗なものだったので、水中にいることも忘れて口を開いて叫ぼうとしていた。

佐藤友哉初の短編集&ハードカバー。『新潮』掲載作品と書き下ろしで計6編。過剰な期待も掛けず下手な先入観も持たずに読んでみると、素直に良いと感じた。あれこんな文学風に書けるんだ佐藤友哉は、って(ちなみに文学て言葉は自分自身よくわからないから「風」を付して誤魔化してます)。でもどこか、突き抜けていないような気もする。
「大洪水の小さな家」は先の展開は読めるけど描写の上達ぶりが見られて唸る。「慾望」は『新潮』で読んだ時も同じように感じたが、ちょいとまどろっこしくて好きでない。語りすぎなのか。「生まれてきてくれてありがとう!」もしつこさが拭えない。「死体と、」ぐらいに、事実以外は語らない方が好きだ。「リカちゃん人形」も展開や語りがほどよい。表題作はちょっと評価が難しい。最後でぶっ飛んでこの短編集の中では異彩を放つが、一番昔の佐藤友哉っぽく感じた。
一皮むけたのは解ったので今度はこの調子で長編が読みたい。