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阿部和重 伊坂幸太郎 『キャプテンサンダーポルト』

キャプテンサンダーボルト 上 (文春文庫)
キャプテンサンダーボルト 下 (文春文庫)
阿部和重伊坂幸太郎の初・合作小説。
戦時中に蔵王の山中で謎の墜落を遂げたB29、謎の感染症「村上病」、不自然な流れでお蔵入りとなった戦隊ヒーロー物の劇場版、「ゴシキヌマ水」を捜し求め大立ち回りを見せる髭面の男と銀髪の外国人。様々な謎要素が小出しに描かれながらも、物語はテンポを悪くせずスピーディに展開する。
お互いの執筆パートを明らかにせず、一文ごとに互いが手を入れる「完全合作」とのことだが、このお陰かお互いのアクの強い部分(阿部ちゃんの品の無さ、伊坂の気取りと気障さ)を中和し合いつつも完全には消し合わず、二人に共通する部分(いい加減な荒くれ者とその暴力的言動等)は良いバランスで残った状態となっている。癖は薄れて旨味が程良く残るような。ここに伊坂のミステリ慣れしたプロット構成と伏線の張り方、阿部ちゃんの大仰な群像劇テイストが加えられ、良質なエンターテイメントとして仕上がりを見せている。
ここは特に阿部ちゃんの影響か、展開のスピーディさ、アクション場面の豊富さ、大作になり過ぎないボリュームなどなど、映像化すると物凄く映えそうな要素が多数。是非劇場で見てみたいと感じる作品。