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福士俊哉 『黒いピラミッド』

黒いピラミッド
日本ホラー小説大賞、最後の受賞作。
エジプト現地で発掘作業を行う研究者に同行していた女子大生が変死した。それを皮切りに、ピラミッドの呪いとでも言うべき不可思議な現象や関係者の異常な行動が現れ始める。
ピラミッド、ミイラ、呪い……一昔前のホラーという印象の題材だが、著者はピラミッド研究の専門家らしく、エジプトの描写も含めてかなり地に足がついた内容。一方で詳しいが故の専門用語濫発は避け、簡潔な表現でスピーディに展開させている印象。こういった抑え方は巧いが、逆に抑えが効き過ぎて物足りない部分もある。妄執のようなものが際立って見えるものの方が好みだが、まぁ仕方ない。これは趣味嗜好の話。大賞らしさは確かにあるが、次回作どのような手を使ってくるのかは興味がある。