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白河三兎 『無事に返してほしければ』

無事に返してほしければ
「STORY BOX」連載作の加筆改稿版。
二年半前に水難で亡くしたはずの息子を誘拐したという電話。最初は妻の錯乱か悪戯電話かと考えていた拓真だが、次なる電話から物語は激しい展開を見せる。
白河三兎が誘拐ものに挑戦。とにかく展開の早さと真犯人の狙いの不明瞭さで読者を翻弄する。
結末は最早、何なのだろう。落ちる所に落ちたとは思えない意外性だが、関与者たちがその行動に至るまでのロジックには納得できるような、それでも不可解が残るような、入り交じり。
また、登場人物による物事の真理を突くような発言や、現実的な苦味走ったエピソードなどは、変わらぬ白河三兎の得意技。巧みである。