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亜城木夢叶 初野晴 『PCP -完全犯罪党- 孤島の子供たち』

PCP -完全犯罪党- (JUMP j BOOKS)
週刊少年ジャンプに連載されていた漫画『バクマン。』の作中作漫画「PCP -完全犯罪党-」を初野晴がノベライズ。
漫画作中漫画のノベライズという複雑な成立過程。それ故に、よくある漫画のノベライズであれば原作で描かれるであろう部分が、存在しないか不十分な状況。これは原作によって読者側に浸透しているキャラクター・設定の活用という面では不利。本書の導入はそうした不十分さにより取っ付き辛く、視点人物・マイの語り口調によってキャラクターの掘り下げを行おうとしているが、結果文章面で癖が生じ読み辛さを感じさせている。
一方で、原作の不十分さは小説家側の自由度の高さに繋がり、好き勝手やれるという特徴もある。それをうまく活かしたのが後半の孤島の臨海セミナー。凝ったゲーム的な設定とチームバトルのタクティクス、そして少しの苦味走ったリアル。序盤を我慢して読み進める価値はある。
流石は初野晴だが、これは正直言って少年漫画向きではない。掲載時に人気は出るかもしれないが、「アニメ化よりもドラマ化に向いている」という原作での評価を、見事に小説上で表現できている。ここまで狙った球を投げたのだと思うが、なんと巧みなのだろう。