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島田荘司 『鳥居の密室 世界でただひとりのサンタクロース』

鳥居の密室: 世界にただひとりのサンタクロース
御手洗潔シリーズ。ワトソンは『進々堂珈琲』のサトル君。
完全密室状態の家屋に残されたクリスマスプレゼントと母親の遺体。父親は遺言を残し自殺し、残された楓は伯母に引き取られ育つ。密室の謎と、両側の家屋をぶち抜いている鳥居の異様さは、いかにも島荘の本格ミステリというインパクト。また、渦中の楓と、事件関与者の国丸の家庭環境に関する描写は、著者お得意の日本人論を下敷きにしたもので、鬼気迫る描写が感情移入を促す。正直トリックには小粒感はあるのだが、これを長編に仕上げて感動に持っていくのは流石の一言。
まぁ、冒頭の真相、伯父伯母の扱いなど細かく気になる点はあるが、これは年を経て自分自身が細かくなってしまったのだろう。笑って許すべし。