書は言を尽くさず、

本読んだりしています

小林泰三 『わざわざゾンビを殺す人間なんていない。』

わざわざゾンビを殺す人間なんていない。
『活性化遺体』ことゾンビが日常的に見られるようになった世界が舞台。企業役員の私邸で催されたパーティでの密室殺人。SF設定下の本格ミステリー。
ゾンビが日常化に至るまでの経緯について、周囲の反応・裁判所の動き・立法対応までもが語られる。設定フェチのような層に受けが良いのでは、と思う。
理屈っぽ過ぎて噛み合わずじれったい会話は、最早小林泰三お家芸と言える。ただ本作については、会話文に偏り過ぎていてどこか息苦しいような印象があるか。
真相を導き出す過程は、極めてロジカル。ただ、題材として設定が勝っている印象で、本作だけでこの設定を使い終わるのは勿体ないと感じる。設定だけでも引継いだ、何らかの続編を期待したい。