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小林泰三 『クララ殺し』

クララ殺し (創元クライム・クラブ)
前作『アリス殺し』に続く、幻想的創作物世界と現実的地球世界をアーヴァタール(所謂アバター)によってリンクしている設定で、井森など登場人物も一部共通する。SFミステリの一種で、一方の世界で殺された者はもう一方の世界でも死を迎える点がポイント。この設定を活かしたトリッキーさはあるが、前作も同様の設定であり新鮮味に欠けるのは否めない。
元ネタが前作は『不思議の国のアリス』だが、本作はE.T.A.ホフマンの作品群であり、バレエ『くるみ割り人形』の原作等はあるものの前作より知名度で劣るのもマイナーチェンジな印象。クララと聞いてアルプスの少女らを期待してしまうが、これは商業的戦術かと思う。
また、論理的過ぎる会話の楽しさは小林泰三作品ならでは。本作では蜥蜴並みの知能で大ボケをかますビルの存在も相俟って愉快度が非常に高い。