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『四畳半神話大系』

四畳半神話大系 (角川文庫)
アニメ版の特別放送(映画『夜は短し歩けよ乙女』公開記念)視聴後の再読。
舞台は京都で、腐れ若者と如何わしい人物が頻出する点はいかにも森見登美彦。森見作品のルーツは本作と『太陽の塔』、そして『夜は短し歩けよ乙女』で大所は整っている。
また、森見文体の持つ唯一無二の洒脱さは色褪せない。ところで、最近の作品よりも一文一文に籠められたパワーが強いように感じるのは自分だけだろうか。

ここから本書(原作)とアニメ版の差異についても語る。どちらか片方でも未読・未視聴の方は注意されたい。


原作は4話構成、アニメ版は11話構成。明石さんとの成就や小津との病室でのラストシーンは、原作では全話ほぼほぼ似たように繰り返されるが、アニメ版では最後の最後、11話でしか描かれない。この点、原作とアニメ版の強調点の違いなのだろう。前者はパラレルワールドもので、後者はタイムスリップものか。
アニメ版では「並行世界を何度もやり直して良い結果に辿り着く」ということ。そのため、最終話でのカタルシスはアニメ版の方が強い。個人的には、「どう転ぼうが凡そ似たような結果に至る」原作の方が、そこはかとなく好きではある。

尚、原作の文体はアニメ版でも「私」の語り口で再現され、尺を埋めるためのオリジナル要素もあるが原作の雰囲気を壊すものではない。アジアンカンフージェネレーションの主題歌も、だよなぁという腐れ方。そして前述の構成にかかる良アレンジ。正しく、効果的にメディアミックスされた例なのではないかと思う。