書は言を尽くさず、

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貫井徳郎 『微笑む人』

微笑む人 (実業之日本社文庫)
本の置き場に困って妻子を殺害した銀行員。不可思議な犯罪の真相をルポ形式で追う。通常の小説形式、インタビュー形式、座談会形式など様々な表現方法を駆使して、高いリーダビリティで一気に読ませる。貫井徳郎とルポ形式は相性が良いのかもしれない。
結末については賛否両論。貫井作品群の一つと捉えればこういったバリエーションも有りと感じるが、単品として見ると満足する読者は多くないと感じる。しかもその人の話で終わるのか、というのが個人的な感想。
あくまで著者は常人。理解できない動機で人を殺す「得体の知れないモノ」を、常人の視点で書いた作品。この方法は著者としてのベストなアプローチであり、なおかつ、この方法でしか「得体の知れないモノ」をリアリティを持たせて描けない著者の限界をも感じさせる。