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大山尚利 『クロスマッチ 止まらない心臓』

クロスマッチ 止まらない心臓
驚異的なリーダビリティの高さで読者をぐいぐいと引っ張るが、本作は少し細部が気になった。
主人公は50の壮年だが、そうは見えないほど若い口調と思考と行動。年相応のエピソードは時折あるのだが、滲み出るような描写はなかった。
そして終盤の急激展開。あまりにペースが急加速しすぎていて、感情処理が追いつかない。もっと丁寧な扱いもできたのではないか。
些細な描写にこだわり差を見せられる著者だからこそ、こうしたディテールの粗には違和感が残った。
が、繰り返しになるが読ませる力は抜群。著者の作品を読むうちに、期待するレベルが高くなりすぎたのかもしれない。もっともっと読みたい作家の1人。