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渡部雄吉 乙一 『張り込み日記』

張り込み日記
昭和の写真家・渡部雄吉の写真集について、乙一が構成と文を担当。
被写体は昭和33年に発生した実際の事件「茨城県下バラバラ殺人事件」。事件を追う刑事2人に同行した20日間の写真を、事実経過を交えながら乙一なりに再構成。
印象的な点としては2つ。
1つめは、「戦後の日本」。終戦より十余年が経過しているが、人々や町の風景から未だ復興の途上であることが色濃く感じられる。
2つめは、「物語性」。写真が撮られた期間は20日間だが、事件はもっと長期化している。それを乙一の再構成によってストーリー、物語性が付与されている。(詳細は乙一のあとがきを読んでいただきたい)
ただし、本書の乙一の文章は事実を伝えるに徹しており、写真に対して文章量はかなり少ないので、文章面だけを求めるのは苦しい。ストーリー工場たる乙一の手腕を期待するならば応えてくれるだろう。