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書は言を尽くさず、

本読んだりしています

倉狩聡 『かにみそ』

かにみそ (単行本)
第20回日本ホラー小説大賞優秀賞受賞。受賞作を含む2編の短編集。
海で拾った蟹は、知性を持ち人語を操ることができた。蟹と主人公が交流を深めていく姿が描かれる。奇妙な共同生活。二者だけの秘密の共有。その関係性は友情か、もっと言えば愛情か。青春小説・恋愛小説のように繊細で丁寧に描写される。
選評にも指摘があるとおり周到に考えつくされた物語であり、それ故にオチが読みやすいのは弱点と言える。ただ、オチが読めた上でそこに着地していく様な読書体験は、悪くない。
なお、『陽だまりの彼女』等で人気のイラストレーターによるカバーデザインと、中身の文章は一見アンマッチであるが、読了後はそれもまた魅力に感じられてくる。
また、日本ホラー小説大賞の受賞作(短編)は、同時収録作品も傑作というケースが多い*1が、本書も御多分に洩れず。「百合の火葬」も表題作に見えるような繊細さで紡がれる。表題作よりも怖さの演出が多めという意味では、比較的オーソドックスなホラーと言えるかもしれない。

*1:玩具修理者』の「酔歩する男」、『サンマイ崩れ』の「ウスサマ明王」、『古川』の「冥い沼」等