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書は言を尽くさず、

本読んだりしています

吉田修一 『太陽は動かない』

太陽は動かない (幻冬舎文庫)
エネルギー開発の利権争い。産業スパイ。政治家の暗躍。アクション大作。と、過去の吉田修一とは縁の無い単語が頻発する。『平成猿蟹合戦図』に続き吉田修一が新境地にチャレンジした作品。
登場人物を掘り下げるような日常描写が吉田修一の得意技。ふとした行動の描写や会話文にはリアルな人間味が溢れている。
しかし、ストーリーが展開し始めると途端に物語のために配置され、物語のために行動するような「駒」のような印象が強まる。
恐らく、今まで読んできた吉田修一作品とのギャップがこうした印象を作り出すのだろう。長崎の田舎で肉体労働とセックスを中心に過ごしてきた登場人物が、急に政治経済に目覚めて富を握ろうしているような、違和感。「いつもの」を期待してしまう読み手にも責任があるのだろうが……。