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書は言を尽くさず、

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北方謙三 『波王の秋』

book

波王の秋(とき) (集英社文庫)
北方太平記シリーズ。
太平記そのものが題材ではなく、九州の水軍・上松浦党高麗済州島を支配する海の民らが、中国の王朝・元との戦いに挑むというオリジナルストーリー。
見事な「漢」たちで溢れるいつもの北方作品。主人公である小四郎は若年の設定のため、若さ・熱さとそれゆえの挫折が丁寧に描かれる。また、船と船で繰り広げられる海戦の描写が、陸戦中心の北方太平記・北方三国志両シリーズを読んできた身としては新鮮。
『陽炎の旗』を読んだ際にも思ったことだが、北方太平記でのオリジナルストーリーものは、読後感が非常に良い。
太平記の時代は腐敗した鎌倉幕府の打倒の辺りから始まるが、無事倒幕した後も平和な時は続かず天皇と新幕府が争い、朝廷は南北に分かれ各々の正統性を主張して諍い、武士らは状況に応じて南北朝の勢力間をいったりきたりして戦いを続けた。
この混沌とした史実に捉われた書き方をすると、作品はどうしても無常感や諦念に溢れてしまう。そうした作品もまた読み応えがあるのだが、救いのない作品ばかりでも滅入るため、本書の存在はシリーズにとって重要。



以上で、北方太平記シリーズを読了。
次は本書と繋がりのある『絶海にあらず』か、それとも水滸伝史記等の中国史に戻るか……。