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書は言を尽くさず、

本読んだりしています

貫井徳郎 『灰色の虹』

灰色の虹
のちにTVドラマ化もされた長編作品。
テーマは冤罪。重苦しいテーマが得意な貫井徳郎だが、冤罪を真っ向から扱うのは初めてのはず。なぜ今まで無かったのか不思議に感じるほどに、貫井作品の重苦しさとこのテーマはマッチしている。
物語の構成としては、冤罪により服役していた江木が逮捕した刑事、裁判を担当した検事・弁護士・裁判官、裁判で証言した目撃者らに復讐を遂げて行く現在のパートと、江木が冤罪に巻き込まれていった経緯を描く過去のパートが交互に綴られる。
特徴的なのは、現在のパートで復讐を受ける側の視点から各人物の掘り下げを行っている点。これによって、読者は冤罪被害に遭った江木へ感情移入すれば良い、という単純な話でもなくなってくる。なぜ冤罪が起こるのか、いったい誰が悪いのか、復讐することの是非は、という具合に様々な事柄を読者に考えさせる。そして、後味悪く終わるのはいつも通り。


冤罪を扱う作家といえば島田荘司御大のことを思い出さざるを得ない。御大の場合は、得意とする日本人論・女性論等が絡み合ってきてしまいややこしくなるが(ちょっとこれ以上続けると御大の話になってしまうのでここらで切り上げる)、貫井徳郎の場合は粛々と作品の中で語るのみで、あまり人を選ばないと思う。