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雀野日名子 『太陽おばば』

太陽おばば (双葉文庫)
連作短編集。
不妊症が原因で離婚したフリーライターが、隣のアパートに住む「太陽おばば」との交流を通し成長していく様を描く。
本作で一貫するテーマは、死生観。すべてが誰かの「死」に直面するエピソードであり、故人の人生・残された者たちの思いなどが描かれる。辛気臭さはあるが、「太陽おばば」の持つ陽気さである程度は相殺される。また、各短編には「日常の謎」風の味付けもされており、退屈せずに読み通せる。
日本ホラー小説大賞で名を挙げた著者だが、恐ろしさ・怖さの描写よりも、繊細さ・優しさの表現の達者ぶりの方が目立つ。本書は爽やかな癒しと感動を覚えさせる良作。