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書は言を尽くさず、

本読んだりしています

吉田修一 『横道世之介』

横道世之介 (文春文庫)
柴田錬三郎賞受賞作。
『好色一代男』の主人公と同じ名を持つ横道世之介18歳の一年間が、一ヶ月ごとの章立てで描かれる。その中に時折、登場人物の20年後のエピソードが挿入される形式。
上京したばかりの大学1年の生活は緩やかに流れていく。どこの大学にも、どんな大学生にでもありそうな風景が、この作品には溢れている。
しかし中盤、急激に読者を物語に惹き付ける要素が差し込まれる。読者はもどかしさと同時に読み進めるが、一ヶ月ごとの章立てによる物語の進行は変わらない。読み続けているうちに複雑な気分になってくる。果たして、自分が早く最後の風景を見たいのか、それとも物語に幕を引いて欲しくないのか。
こうしたテクニックも著者の御手の物だが、思った以上に後味良く話が終わる点は意外。ほんとうに、優しい作品。