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書は言を尽くさず、

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北方謙三 『武王の門』

武王の門〈上〉 (新潮文庫)武王の門〈下〉 (新潮文庫)
北方太平記シリーズ。
後醍醐天皇の子である懐良親王と、九州肥後の名将・菊池武光を主人公とする。
南北朝時代というと、どうしても足利尊氏楠木正成新田義貞らが激戦を繰り広げた京都周辺での戦いや、北朝南朝に分かれた二つの皇室が思い出されるが、本作は南北朝騒乱における九州にスポットライトを当てている。
懐良と武光が手を結び、数々の苦難を乗り越えて九州統一を果たし、海の向こうにある更なる夢を目指す姿が描かれる。結末は歴史の結果から容易に想像でき、崩壊を知りながら僅かな望みとともに読み進めた先に見える夢の末路は、心を揺さぶる。
北方太平記シリーズとしては第一作にあたるためか、他の作品に比べて周囲の情勢や政情等の説明が少し丁寧な印象。だからと言って、独特の無常観や哀愁が欠けている訳ではない。
若かりし頃に見た野望と、成熟した後に見る風景。作中で流れた二十年という時間の重みを感じさせる傑作。