書は言を尽くさず、

本読んだりしています

法条遙 『リライト』

リライト (Jコレクション)
タイムトラベルもののSF作品。
著者は日本ホラー小説大賞の長編賞受賞によるデビューだが、デビュー作もその次作もSF設定を含んだ作品であった。その上で今回、ついにタイムトラベルもので来たか、という印象。
タイムリープ・中学生の甘酸っぱい青春・未来から来た少年・ラベンダーの香り等のキーワードは、同じタイムトラベルものの名著・筒井康隆著『時をかける少女』を意識したオマージュであることを一切隠していない。
しかし、本書はあまり爽やかな余韻は残さない。序盤から不可思議な謎が発生し、喉に小骨が刺さったような感じで読み進めることになる。終盤でその謎の解決はしながらも、読後感は途轍もなく歪である。ただ、著者のやりたかったことは、まさにこの終盤の中の終盤のシーンのように思える。こうした試みは、正直言うと好き。


(ネタバレのため行をあけます)


















おそらく著者が表現したいものは、①「タイムパラドックスと向き合おうとした作中の登場人物」、更に②「向き合おうとしたが故に収拾がつかなくなった姿」である。
それは本来、作品を綴る著者が向き合って整理すべき問題であり、登場人物については①はともかく②が描かれるべきではない。(読者もまた、登場人物に引っ張られて混乱して収拾がつかなくなるため)
が、敢えて三次元に生きる人間の限界として、このように潔い処理をしたと考えれば…その居直り方は有りといえば有り、かもしれない。