書は言を尽くさず、

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舞城王太郎 『獣の樹』

獣の樹 (講談社ノベルス)
舞台が福井県西暁町なのはいつもの通りだが、主人公は「成雄」。『山ん中の獅見朋成雄』のパラレルワールドとも言うべき物語。
感情を失ったかのように淡々としながらも暴力的な文体や、アイデンティティがキーワードとなる点も、『山ん中〜』と相通ずるものがある。特に無理に抑えて書いているという風にも感じられず、静かに独りでに集結していく様が感情移入を誘う。舞城王太郎が綴る文章の中では、最も好きな部類。
物語としては前哨戦で終わったしまった感があるが、「成雄」の物語として一番面白い部分がここだったのだろう。ただ舞城の描く「革命」の行く末にも興味がある。