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書は言を尽くさず、

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佐藤友哉 『デンデラ』

book

デンデラ (新潮文庫)
「村」の姥捨ての風習により、「お山」に入った老婆だけが密かに暮す共同体、「デンデラ」。同じく姥捨てに従った70歳の老婆「斎藤カユ」を視点人物とする。
カユは「村」以外のコミュニティを知らない。「村」では掟/定石に従い何も考えずに過ごすことができたが、「デンデラ」ではそうではない。「デンデラ」は不安定であり、その中で一致団結して安定を見出すための全体方針が必要とされる。「デンデラ」は50名以上の人員で形成されていることから自ずと派閥が存在する。自分の頭で考えてスタンスを決めることを要される。そして「羆」という外的脅威が介入する。これらのコミュ二ティの情況描写を通して、カユが「村」の歯車から「個」の駆動体に変化していく様を描く。
この物語についてこうした分解をすると、佐藤友哉がデビュー以後に抱え続けてきた「個」のコンプレックスは脈々と流れていることが判る。本書の結末を見るに、その「個」について1つのスタンスを打ち出しているように見え、好感が持てる。
その一方で、文体面での工夫や、台詞面での先鋭さにて、作家としての成長が垣間見える。佐藤友哉単体の作品として最高傑作だと思えた。