書は言を尽くさず、

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島田荘司 『三浦和義事件』

いわゆる「ロス疑惑」を扱ったノンフィクション・ノベル。「マスコミ・サイドの視点」「三浦和義の視点」「裁判」の3章構成で、昭和の終盤にワイドショーを揺るがした疑惑の事件に迫る。
目撃証言が不確かな銃撃事件、ジェーン・ドゥ88等…事件にかかる魅力的な謎はさることながら、マスコミに追い込まれていく三浦和義島田荘司が鬼気迫るように筆を尽くす。これで面白くないはずがない。
やはり最終的に残るものは島田作品特有の島荘節であり、提示される日本人論は、一連の事件そのものから読み解いたものというよりは、著者の持論・私見を補強するための材料としてこの題材を活用(利用?)したように見受けられる。
それに関して、「興味本位」だとか「自己満足」だとかいう言葉を用いて著者を批判するつもりは毛頭ない。何故ならばこの作品が途轍もなく魅力的な作品であるためだ。読者として、非常に楽しい時間を過ごせた、そのことが全てである。
そして、本作品は銃撃事件の判決確定までの時点で文庫化されている。それこそ「興味本位」かもしれないが、ジェーン・ドゥ88事件における三浦和義の逮捕から自殺までの最新の状況までまとめた、大河小説として再構築して欲しいと感じる。