書は言を尽くさず、

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白河三兎 『プールの底に眠る』

第42回メフィスト賞受賞作。
殺人未遂で任意同行を求められ留置所で過ごす「現在」と、主人公が高校生だった頃の「13年前」が、並行して描かれる。
消えてしまったものや、失ってしまったものや、その結果生まれたものや……。淡い恋愛とほろ苦い現実が綯い交ぜになった青春小説の体であり、甘酸っぱいような痛々しいような描写中で、徐々に真相を明るみにしていく流れは、読者を退屈にさせない。
多種多様・玉石混交のメフィスト賞の中では、特に突出するような要素は持っていないが、逆に受け入れ先を改めて考えてみると、ライトノベル界隈やファウストよりも、メフィストで正解に思える。
深水黎一郎以来久しぶりにメフィスト賞受賞作を読んでみたが、意外に外れではなかった。